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キングスマン [映画]

マシュー・ヴォーン監督作品だということと
宇多丸さんの『ムービーウォッチマン』に後押しされて
観てきました。

PG15でこれなら
成人指定の『キックアス2』は観に行かなくて正解だったんだなー。

スパイ映画、というかエージェント映画との触れ込みですが
だいぶコミカル(というか、漫画的)でドライな印象を受けました。

こちらはX-MEN First Class観たことあるものですから、
合宿映画好きなのね、とか
お屋敷空撮する絵が既視感バリバリだなあ、とか
コマを割る感じの画面を使って
時間経過を圧縮してダラダラ時間かけないのは相変わらずだけど
こだわるところにはものすごい尺割いてるなあとか
そんな感じでした。
あちこちすんごい、観る人向けにハッタリ効かせてる感アリアリ。

飽きないし目が離せないし
映画館というハコの中で作品に没入できるって意味では佳作だと思います。
が、観る人を選ぶであろうなあ…というのは想像に難くありません。
『アーサー王と円卓の騎士』がわからないとまずダメでしょ。

この映画を一番楽しめるのはやっぱイギリスの人かしら。
◆仲間たち
大学はどこ?って会話。
日本と違ってあちらは大学全入なんて寝言は言わないバリバリの階級社会。
男の子が生まれたその日に
名門小学校の入学の予約を入れちゃうような社会です。
よっぽど才能があれば上に上がるチャンスはないわけではないことは
作中の「はじめまして」のシーンでも出てきますけどねー。
どうぞよろしく、の挨拶の仕方もUpper流でありました。

ハリー以外のキングスマンはみんなUpper Classを選ぶような人ばかり、
という暗喩でもありますね、これ。有色人種は一人もいなかったし。
そういうキングスマンvsヴァレンタインという構図は
とてもスパイシーかも。

◆ハリー
徹頭徹尾無表情で感情を表に現さないのが当たり前。
(「表」と「面」ってどっちも読みが「おもて」だっていうのはなんか面白い…)
ぱっと見冷徹に見えて実際冷徹なんだろうけれども
気に入った人にアドバイスを欠かさず
受けた恩を忘れず
チャンスを失った後もその人物を切り捨てないあたり
かなり情に厚い人であることは察せられますね。

しかしなんというか
野菜か果物撃つように人の頭撃って回るのってえぐい。

◆エグジー
終わりの方のパブ「黒太子」でのアレは手叩いて笑いました。

◆マーリン
魔法使いと弟子的な何か。

◆チャーリー
なんとなくどっかの皇太子に似た役者を使って
チャーリーって名前つけてああいう役をやらせるっていうの
ずいぶん意地悪だなーっと。

◆ロクサーヌ
彼女がこういう名前なのにも多分意味はあるんだろうけど
作中ではわかりませんでした。
エグジーとロキシーの関係性って
なんか小学校の仲間意識もった男女的で色気の欠片もないっていうか。
ちょっぴり立場の弱い男の子を
優等生な女の子がかばったりする構図ってあるじゃないですか。それに近い。
そもそもヴォーンの作品では
恋愛とかそういうのあんまり重要じゃないっていうか
チームワークの方が上位にあるっていうか
そんな感じだよねー。
これって、ハリーとハーマイオニーのパロディ?

◆スカンジナビアの王女さま
水色に黄色じゃ伏せてる意味ない。後で国名出てたけどさ〜。
隔離監禁されてたってことは、
生かしておいて利用する気はあったってことだろうねー。
利用する気があるならチップ埋め込んでたろうし、
というか率先してチップ埋め込む必要があったのは
彼女のような立場の人間だと思うんだけど、
話の都合上それはできなかった、と。

◆Engrand 5 Germany 1
これは2001/9/5にミュンヘンで行われた
WM2002ヨーロッパ予選の試合のスコアです。
サッカーに関してはドイツ贔屓なので、このネタは正直きつい。

さてこれの意味するところは何かといえば
本当の上流階級の方は
話題にするために試合の結果については記憶するだろうけれども
試合を観そびれたとか思わないところですかなー。
彼らが興味を持つとすれば
クリケット、競艇、競馬、ラグビーでございます。

つまり、ハリーもそんなにUpperな出身ではないかもしれないってこと。
ラガーじゃなくてギネス飲むあたりもそんな感じなのかもしれない。

◆特訓
極端で現実的ではないものが多い。観てる側向けの娯楽って感じ。
時間の経過を考えると
ものすごい量の座学とトレーニングを課せられたことだけは
想像に難くない。

◆NLP(神経言語プログラミング)
ネタにされるってことはよっぽど流行ってるんですかね。
あちらで。
で、テストが行われた教会での惨劇。
あれ観てて「あれ?私が観に来たのってゾンビ映画だったっけ?」って気分になりました。

長回しやってる間はハリーだけが正気を保っているように見えるんだけど
彼が教会の外に出てから実はそうでなかったことがわかってゾッとしました。
なんというか、ポーカーフェイスというか無表情というか
それを保つ人物造形がこういうところで効いて来る。
うまい。

◆新世界秩序
いわゆる陰謀論を好む方たちの間で囁かれてる話題が沢山入ってました。
管理されるためにチップを埋め込まれるとか
マインドコントロールするためにあれこれ仕掛けられるとか。
でも、いわゆる上流な方だけ生き残っても
額に汗して働く人たちがいなければ意味ないんじゃないかなーとか思う。

ああ、スマートフォンとか持ってないような地域の人たちを
奴隷化するとかそういう考え?
しかもそれを先導してやるのが
ヴァレンタインっていうのがブラックすぎてもう…。

◆人類
宿主を死に至らしめると自覚しているウィルスは人類だけである。
だから粛正する っていうのはよくあるお題目だけれども
ノアの方舟用意してる時点で万全ではない…と思いました。

でも
ヴァレンタインとガゼルだけチップが埋め込まれてなかったってことは
最後に二人だけになるようなことがあった場合も一応想定はしてたってことかな?